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シンポジウム 北海道養豚研究会報 30巻2号8-11 1998年11月;特集「呼吸器病、最前線」より
ワクチンを用いた進行性AR対策について

北桧山町 高橋貞光
アドバイザー 檜山家保 山本聖子

AR(萎縮性鼻炎)

症状 くしゃみ、アイパッチ、鼻出血、鼻萎縮・湾曲、発育遅延

原因菌

ボルデテラ

毒素産生パスツレラ

病変

軽〜中
回復する場合あり


回復しない

混合感染で重篤化

好発時期

多くは1カ月齢未満

日齢問わない

病態

非進行性

進行性

 2つの原因菌に対し、日本でほ従来、ボルデテラ中心に対策されてきましたが、被害が十分に抑えきれていなのが現状でした。
 本農場では従来のポルデテラ対策に加え、パスツレラ対策を新しく行い、病変だけでなく、増体に改善が見られたので、概要を紹介します。

飼養状況(H9.4〜10.3)

●一貫経営   ●労働力:家族2名、雇用3名      
●飼養頭数 : 繁殖メス WLほか 125頭      
       繁殖オス Dほか  16     
     哺育〜肥育    1,400    
●1頭平均分娩:2.45産/年               
●1腹平均離乳:9.2頭                 
● 出荷   :2,900頭/年              
●  AR対策 : 母豚 ボルデテラワクチン        
(従来)  哺乳豚  抗生物質 4回注射    

AR対策を見直したきっかけ
@ボルデテラ対策だけでは発症を十分に抑えられない。
A慢性病対策をして,肥育豚舎の回転を上げたい。
BPRRSウイルス陰性農場なので,ウイルスが侵入する前に呼吸器病対策を徹底しておきたい。

AR原因菌の検査

\肥育豚

哺乳

1ヵ月齢

2ヵ月齢

3ヵ月齢

4ヵ月齢

毒素産生パスツレラ

ボルデテラ

検査材料は鼻腔スワブ
毒素産生パスツレラはすべてD型
 まず,原因菌を調べたところ、毒素産生パスツレラが広く浸潤していたことから、進行性ARと診断されました。低月齢でボルデテラ歯が検出されていないのは、ボルデテラワクチンの効果だと思われます。

パスツレラワクチン応用試験

免疫状態

試験群

母豚(9頭) ボルデとパス
分娩35、15日前
子豚(40頭) パスだけ30、55日齢 :母子ワクチン
子豚(38頭) ワクチンなし :母ワクチン
母豚(4頭) ボルデだけ
分娩35、15日前
子豚(34頭) ワクチンなし :コントロ−ル
 そこで、パスツレラ対策としてトキソイドワクチンの導入を試み、農場に合うブログラムを作るために試験をしてみました。
 肥育豚を免疫状態により3グルーブに分け、耳標で個体識別し、エサを切り替える、離乳、80日齢、120日齢、そして出荷時に、症状、保菌状況、血清中の抗体、体重・増体、病変(出荷時のみ)、出荷日齢を調査しました。

検査結果
1.パスツレラワクチン抗体(免疲)
@母子ワクチン群ほ出荷まで、ほぼ全頭が抗体をもっている。
A母ワクチン群は80日齢まではほぽ全頭に抗体があるが、その後消失するがでてくる。出荷まで60%以上の豚が抗体をもっている。
Bコントロール群は産まれてから出荷するまでずっと坑体をもっていない。
*ボルデテラ抗体は3群とも有効値で推移。

→出荷までの免疲状態は母子ワクチンが最も高い。
→コントロールはボルデテラ抗体しかもっていない。

2.臨床症状(鼻の変形)

@コントロール群は日齢とともに発症が進み、出荷時は40%まで増加。
Aワクチン群は120日齢まで、約10%発症していたが、出荷時には症状が見られなくなった。
*ポルデテラ単独の若齢期の病変は回復することもあるという報告がある。

→パスツレラ対策をしていないコントロール群では進行性ARが発症したのか?
→母子ワクチンと母ワクチンでは、症状を抑制する差は見られなかった。

3.鼻甲介骨の病変
@コントロール群は70%が陽性。
Aワクチン群は約10%が陽性。
Bコントロ−ル群は30%が重症(指数5)だったが、ワクチン群ではなし。
*どの群からもバスツレラ菌、ボルデテラ菌は同等に検出された。
→パスツレラ対策により、病変は抑制された。
→母子ワクチンと母ワクチンに差は見られなかった。
→パスワクチンの効果は感染防御ではなく、感染後菌が出す毒素の働きを抑制する。

発育状況

1日増体(g)

離乳〜80日

〜120日

〜出荷

母子ワクチン

457

789

693

母 ワクチン

459

790

709

コントロ−ル

435

727

571

4. 発育状況
→どの期問もパスツレラ対策群の方がコントロール群より増体がよかった。
→母子ワクチンと母ワクチンに差は見られなかった。

出荷日齢

平均増体重(g/日)

計算出荷日齢(110kg)

母子ワクチン

592

185.8

-23.7日

母ワクチン

593

185.5

-24.0日

コントロ−ル

525

209.5

5.出荷日齢(体重110kg、平均増体重から算出)
→パスツレラ対策群はコントロール群より24日、出荷日齢が短縮した。
→母子ワクチンと母ワクチンに差は見られなかった。
 以上の結果から当農場では進行牲ARを予防することで、病変、増体が改善されることが確認されました。また、母子ワクチン群と母ワクチン群では抗体保有状況以外に差が見られなかったので、コスト、手間がかからない母免疾法で有効と判断しました。

A 増加した費用
出荷豚1頭あたりのワクチン購入費 = A1 / A2  = 47円:A
A1 母豚1頭の年間ワクチン購入費
6.9ml×150円(ml)=1,035円
 * 2ml×2回×1産  =4ml 初回
   2ml×1回×1.45産 =2.9ml
A2 母豚1頭の年間出荷頭数
  1腹平均離乳頭数×年間分娩×(1-事故率)
  9.2頭×2.45産×0.974 = 22頭
 この対策は経済的な効果をうむか???
 パスツレラ&ポルデテラ母免疫法とポルデテラのみ母免疫法を比較してみました。
ワクチン接種作業には差異がないので、ここではパスツレラワクチンの購入費と、出荷日齢の短縮による飼料購入費の滅少を算出し、比較してみました。
→母豚1頭のパスツレラワクチン購入費
 1,035円を1頭あたりの出荷豚22頭で割ると、47円になります。
→出荷1頭あたり47円費用が増加する。

B 減少した費用
出荷豚1頭あたりの飼料購入費= 2208円 : B
後期飼料購入費 × 標準給与量 × 出荷日齢の短縮
=46円(kg)× 140kg/70日 × 24日
=   2208円 : B
 キロ単価46円(H10年4月)の後期飼料購入費は、1日約92円かかり、出荷日齢が24日短縮したことで、2,208円減少します。

 以上の算出結果から、B一A=2,161円となり、つまりワクチン代47円の費用をかけても、出荷1頭あたり、2,161円のエサ代が軽滅されるので、パスツレラ対策は当農場に利益をもたらすという結輪になりました。

まとめ

1 原因菌を検査し、ボルデテラとパスツレラの混合感染による進行性ARと診断
2 ワクチンを用いたパスツレラ対策により、病変だけでなく増体が改善され、
 経済効果が得られた。
  当農場の汚染度では母免疫法で有効であった。
3 現在、ボルデテラ・パスツレラワクチン母免疫法を衛生プログラムに採用。
 哺乳豚の抗生物質4回-->3回。
4 保菌状況は改善されなかった。消毒が課題。
 慢性疾病の原因を特定し、それに合った対策をすることは経営上重要と思われました。

 今年は、次のターゲット、マイコプラズマ肺炎対策をスタートさせました。これからも、経営改善していきたいと考えています。

協力
若松農業協同組合畜産課、北桧山町役場畜産係、道南NOSAI北部家畜診療センター
北海道畜産公社函館事業所、函館市立食肉検査所、ホクレン函館支所酪農畜産課
滝川畜産試験場衛生科、化血研第2製造部・病性鑑定センター、桧山家畜保健衛生所

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